胸に迫る小説

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『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫【著】

小説を読むとすぐに眠たくなってしまう私が、眠気を忘れて一気に読んだ数少ない小説です。

この小説は、1985年(昭和60年)8月12日、日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落した実際の事故をもとに書かれています。

この事故では、乗員・乗客あわせて524名のうち、520名もの方がお亡くなりになられました。

あれからもう35年が経とうとしていますが、私が子供の頃にテレビのニュースでこの事故の一報を聞いた時、すぐには現実のものとして受け止め切れず、頭が真っ白になってボーっと見ていた記憶があります。

その後、奇跡的にたすかった4名の生存者の方を救出する様子がテレビに映し出され、まさに固唾をのんで見守っていたことを思い出します。

この小説の著者の横山秀夫さんは、当時、新聞記者をされていて、実際にこの事故に遭遇し、報道を通して直接かかわった方です。

だからこそ、小説の中の出来事のすべてが圧倒的なリアリティーにあふれ、主人公の思い一つ一つが読んでいる人の胸に強く迫ってくるのでしょう。

小説では、日航機が墜落したという一報を受けた主人公の新聞記者が、すぐには現実のものとして受け止められず、どこか他人事のように感じていたところから、一気に現実のものとして事故と向き合い、大きな濁流に飲み込まれるかのごとく、刻一刻と目まぐるしく変わっていく状況に翻弄される様子がとてもリアルに描かれています。

私は小説の中の主人公を通して、著者の葛藤や張り裂けそうな思いに触れながら、自分自身、人としてどうあるべきか、いろいろと考えました。

読み終えた時は猛烈な嵐が過ぎ去った後の虚無感のようなものを感じた気がしました。

本当に読み応えのある小説です。

大変有名な小説であり、映画にもなっているので、すでに読まれた方も多いと思いますが、まだの方はぜひ一度読んでみてください。